奥山河 望郷の景
 

愛知県新城市から茶臼山までの奥三河、およびその北山麓の長野県根羽村と売木村は、私にとって四季折々の風景に出会える最も身近な地域です。かつて前田真三氏が写真集『奥三河』でまとめたこの地を、自分なりの視点で見つめ、その情景を撮影し始めて、はや十数年が経ちました。遙かな昔から繰り返されてきた季節の移ろいを、せめて私が出合った光景だけでも何らかの形で記録しておきたいと考え、撮影に励んできました。その過程で、この地に暮らす人々のかたわらでは、素晴らしい光景が日々展開されていることを知りました。そこでは、人々のくらしの中で培われた田畑や山林の風景美と豊かな自然が魅せる情景とが融合して、まさしく我々の心の中にある懐かしいふる里を醸し出していると感じています。この心和む風景が、いつまでも残ってほしいと願っています。

1 夜明け前(よあけまえ)
設楽町津具の集落を見下ろせる茶臼山高原道路から撮影しました。夜明け前の静けさの中、前日に降り積もった雪がうっすらと浮かび上がっていました。これからまた、山里の新たな一日が始まります。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(200)/f8 2/3・8秒/RVP50/ハーフND/愛知県設楽町/2013年1月27日6時30分

2 一片の雲(いっぺんのくも)
茶臼山高原道路終点付近では、カラマツ林からの日の出を撮影することができます。運良く一片の雲が流れて来ました。その雲は日の出とともに赤く染まり、あたかも「夜明け前」とつながっているかのような雰囲気を表現できました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(100)/f22・1/8秒/RVP50/愛知県豊根村/2010年1月23日6時59分

3 水温む頃(みずぬるむころ)
売木村の白樺高原の渓流では、氷の造形をよく撮影します。この日は渓流の岸には雪が残っていたものの、薄氷は割れ出し、春に向けて少しずつ季節が進んでいることを実感しました。太陽の煌めきが、水面に温もりを加えていました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤULD M50mmF4.5L/f22・1/4秒/RVP50/PL/長野県売木村/2012年2月5日12時56分

4 蒼い刻(あおいこく)
夜明けの光景を撮影しようと売木村の平谷峠に向かう途中、カラマツ林の上に三日月が出ていました。月の動きが予想外に速く、大慌てで撮影場所を設定しました。冬から春へ時間の経過をイメージしました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(200)/f16・1秒/RXP/長野県売木村/2013年12月1日6時

5 春の歓喜(はるのかんき)
放射状に伸ばした枝先に、ようやく訪れた春を喜ぶようにミツマタが黄色い花を付けていました。できるだけ低い位置にカメラを据えて、広角レンズで画面から溢れんばかりの喜びを表現しました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤULD M50mmF4.5L/f16 2/3・1秒/RVP50/愛知県新城市/2014年3月23日16時41分

6 夫婦桜(めおとざくら)
根羽村を走行中、遠目に形が良さそうな桜が見えました。細道を上り近づいてみると棚田の上に二本のしだれ桜が今を盛りと咲いてました。その近くでは、桜の持ち主であるご夫婦が仲むつまじく農作業をされていました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ250mmF4.5/f22・1/2 秒/RVP50/長野県根羽村/2013年4月21日15時30分

7 花吹雪(はなふぶき)
設楽町福田寺の小さな池での光景です。水面に舞い降りた桜の花が、風によってゆっくりと動いていました。池に投影された桜木の影とスローシャッターで動感を出した花びらで花吹雪をイメージしました。また、流れて来たツバキの赤をアクセントにしました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(140)/f45・3秒/RVP50/PL/愛知県設楽町/2010年4月10日9時40分

8 こもれび
茶臼山高原の北、売木峠周辺のブナ林です。降り注ぐ陽光に、見上げた若葉が輝いていました。新緑の季節の到来です。6~8で、よく似た樹形を使用することにより、自然に写真がつながる印象にしました。
マミヤ7Ⅱ/マミヤN43mmF4.5L/f11 1/2・1/60 秒/RVP100/長野県根羽村/2010年5月9日11時28分

9 苗色眩し(なえいろまぶし)
田植えが終わって数週間が経った新城市の「四谷の千枚田」です。朝方、わずかに残った霧に陽光が差し込み、さわやかな初夏の棚田を演出していました。ここでは6月に灯籠が畦道を縁取るお祭りもあるようです。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールM65mmF4L-A/f22・1/8秒/RVP50/愛知県新城市/2013年6月8日7時35分

10 水無月の森(みなづきのもり)
霧に包まれた杉林とそこに佇むコアジサイは、梅雨時の奥三河の代表的な風景です。現地に着いた時は霧が出ていなかったのですが、その時に備えて撮影する場所を探しながら様子を見ていました。待望の霧が流れ始めると辺りの景色は一変し、幻想的な風景になりました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールM75mmF3.5L/f16 1/3・15秒/RVP50/PL/愛知県東栄町/2013年6月15日10時45分

 

11 奇岩の淵(きがんのふち)
東栄町の釜淵は、安山岩の柱状節理が多く見られる地域にあり、川底に珍しい模様を見ることができます。晴天が続くと流れが弱くなるので、降雨後の水量が豊富な時に撮影しました。滝上の緑葉は、季節感を出すのに一役買ってくれました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ210mmF4.5/f22・1/2秒/RVP50/愛知県東栄町/2011年7月22日7時25分

 

12 日向の青田(ひなたのあおた)
「四谷の千枚田」の夏です。数ヶ月前に植えられた苗は、見違えるように生長し、夏の日差しを目いっぱい浴びていました。木陰から見下ろすと、その緑がいっそう鮮やかに見え、立木のシルエットは棚田を渡る風の心地よさを感じさせてくれます。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(120)/f32・1/4秒/RVP50/愛知県新城市/2013年8月11日9時40分

 

13 盛夏の蓮池(せいかのはすいけ)
売木村の向原蓮池は、私のお気に入りの撮影地で良く立ち寄る場所です。この日は、夏真っ盛りとあってピンクの蓮の花で埋め尽くされていました。絵柄が単調にならないように、手前の水面にスイレンを入れて撮影しました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ210mmF4.5/f32 1/3・1秒/RVP50/PL/長野県売木村/2010年8月11日9時5分

14 秋の案内人(あきのあんないにん)
向原蓮池には、数多くのトンボが生息しています。蕾の上で逆立ちポーズを決めているのは、ショウジョウトンボでしょうか。このしぐさは、縄張りを主張するためとか、暑さ軽減対策などの説があるようです。赤いトンボを見ると、秋が近づいていることを感じます。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ350mmF5.6+中間リング/f5.6 2/3・1/60秒/RVP50/長野県売木村/2011年8月26日10時18分

 

15 石積みに実る(いしづみにみのる)
明治時代、梅雨時の山崩れで失われた「四谷の千枚田」を、先人たちは5年の歳月をかけて頑丈な石積みの棚田に蘇らせたそうです。今日でもこの地域の人々は、先祖の功績を守り続けています。頭を垂れた稲穂と石積みが入る構図で、収穫間近の千枚田を切りとりました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤULD M50mmF4.5L/f22 2/3・1/2秒/RVP50/PL/愛知県新城市/2012年9月29日12時5分

 

16 初秋のひととき(しょしゅうのひととき)
稲刈り後のはざ掛けを探していたところ、その近くにコスモスの花がこんもりと咲いていました。はざ掛けよりコスモスの淡い色彩の方が、ほっと一息つくような初秋の季節感が出せるのではないかと思いました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ350mmF5.6/f32 1/2・1.5 秒/RVP50/長野県売木村/2013年9月28日6時50分

 

17 天高く(てんたかく)
茶臼山高原の小高い丘に、一本の木があります。この日は、青空のもと見事に紅葉した姿で迎えてくれました。時折湧き上る白雲をバランスよく画面に配置し、気持ちのよい秋日の絵柄にしました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(135)/f11・1/15秒/RVP50/PL/愛知県豊根村/2013年10月27日11時21分

18 川辺の彩り(かわべのいろどり)
愛知県豊根村の道の駅付近にある坂宇場川です。緩やかに曲がる川に覆い被さるように鮮やかな紅葉の木々が彩りを添えていました。秋の清涼感を出すために、日が当たる前の時間帯に撮影しました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤULD M50mmF4.5L/f11 1/3・2秒/RVP50/PL/愛知県豊根村/2011年11月20日7時35分

 

19 秋を映して(あきをうつして)
売木村の白樺高原を下った所で、落ち葉と紅葉の反射が映り込む渓流に出合いました。瀬音以外は何も聞こえませんでした。一足早く岩の上にたどり着いた落ち葉は、水面に映った彩りにかつての自分を思い出しているかのようでした。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(130)/f32・4秒/RVP50/長野県売木村/2011年10月29日8時55分

 

20 残された実り(のこされたみのり)
設楽町で見事な枝振りの柿の木を見付けました。実がなる頃に訪れると、バランスよく適度に柿が残っていました。かつては、重要な食料だったはずですが、今日では収穫する方がいないのか、それとも野鳥のために残しているのでしょうか。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ350mmF5.6/f22 1/2・2秒/RVP50/愛知県設楽町/2011年12月11日7時32分

 

21 つるべおとし
茶臼山周遊道路には、周りの樹木とは形が明らかに違う奇妙な木があります。その木が両隣の木々とともに、穏やかな秋の夕景を見せていました。この時期の太陽はみるみるうちに沈んでいくので、フィルムを交換していて撮り逃した経験がしばしばあります。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ350mmF5.6/f22 1/3・1/6秒/RVP50/長野県根羽村/2012年10月21日/17時7分

 

22 星と語らう(ほしとかたらう)
茶臼山高原は星空もきれいで、天気が安定する季節になると天体観測に訪れる人たちと会うこともあります。秋の夜長にカシオペア座と語り合っている一本木は、「天高く」と同じ木です。赤道儀を使ってできるだけ多くの星々を背景に写し込みました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールZ110mmF2.8W/f8・60 分/RXP/LBB2+M5/愛知県豊根村/2013年11月5日2時56分

 

23 冷る朝(ひゆるあさ)
南信州の売木村は、初冬になると朝方はかなり冷え込み、霜の降りる日が少なくありません。手前に田園を配した広がりのある風景と、「束の間の煌めき」の狭い風景を隣り合わせることで、冷え込む朝の農村を表現しました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ250mmF4.5/f32・2秒/RVP50/長野県売木村/2009年12月6日7時37分

 

24 束の間の煌めき(つかのまのきらめき)
霜の付いたススキは逆光によりきらきらと煌めいていました。しかし霜はあっという間に解けてしまい、いつものススキに戻ってしまいます。早く撮ってあげなければと思いながらも、露出に迷った事を思い出します。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤAPOセコールZ350mmF5.6/f8 1/2・1/20秒/RVP50/長野県売木村/2010年12月12日9時50分

 

25 寒波の予感(かんぱのよかん)
茶臼山高原の矢筈池に氷が張る頃には雪が降り始め、スキー場の降雪機が動き出します。氷の上に降った雪は、風に吹かれて模様を描いていました。切り株から新たに成長した細枝に、これから訪れる寒い季節への覚悟を強いられているようでした。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(160)/f22・1.5秒/RVP50/PL/愛知県豊根村/2012年12月9日9時20分

 

26 白い装い(しろいよそおい)
二度の大雪に見舞われた2014年2月、「四谷の千枚田」も一面の雪に覆われていました。雪の重みでしなる竹が、白い棚田を見下ろしている雰囲気に仕上げました。この大雪で、植林されていた樹木が至る所で折れてしまっている悲惨な光景を目にしました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(110)/f32 2/3・1秒/RVP50/PL/愛知県新城市/2014年2月8日11時2分

 

27 春待つ若木(はるまつわかぎ)
売木村の白樺高原では、なだらかに積もった雪の上に樹木の影が投影された景色を見ることができます。スノーシューを履いて撮影場所を探していると、一本の若木が目に入りました。この若木は周りの木々に見守られながら、じっと未だ来ぬ春を待っていました。
ホースマン45FA(6×7ホルダー)/フジCMフジノンW125mmF5.6/f45・1/2秒/RVP50/PL/長野県売木村/2013年1月27日/12時18分

 

28 夕映えの雪畑(ゆうばえのゆきはた)
小戸名渓谷を通り抜けた所で、積もった雪が面白い形をした畑に遭遇しました。夕暮れに近い時間帯だったので西の空が色づき始め、それに伴い畑の雪にも淡い色がつき始めました。私の他にこの光景を見る人は誰もなく、山里は静まり返っていました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールズームZ100~200mmF5.2W(100)/f32・1秒/RVP50/ハーフND/長野県根羽村/2010年1月4日16時30分

 

29 遠い記憶(とおいきおく)
4月に入ったというのに、売木村の白樺高原では水たまりに氷が張っていました。じっくりと観察してみると、細かい氷の造形美の中に落ち葉が一枚閉じ込められていて、昨年の晩秋の光景が頭の中に蘇りました。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤマクロM140mmF4.5W/L-A/f16 1/2・1/2秒/RVP50/PL/長野県売木村/2012年4月1日8時10分

 

30 春はそこまで(はるはそこまで)
売木村の小さな田園で、素晴らしい造形の薄氷が一面に張っていました。4月になってからこんな光景に出合えるとは思いませんでした。薄氷に浮かぶ虹色は、すぐそこまで来ている春を期待させる存在でした。
マミヤRZ67ProⅡ/マミヤセコールM65mmF4L-A/f22 1/3・1/ 2秒/RVP50/PL/長野県売木村/2012年4月1日8時40分

森上 倍名

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